冬のお花と赤い実

2018.12.11よしなしごと

散歩をしていると、赤い実をつけた木に目がいきます。
寒い季節に、その赤い色がとても美しく映えますね。

よく似ている木に、千両と万両があります。
千両は葉の上に、万両よりも小さい赤い実をつけます。
万両は、葉の下に赤い実をつけますが、Coralberry(さんご色の実)といわれるように、つやのある赤い色をしています。

同じく赤い実を持つ南天は、難を転じる木として、裏鬼門の南西に、そして表鬼門の東北には、ヒイラギを植え、鬼封じとします。
ヒイラギの葉のとげとげが、邪気を祓うと信じられ、魔よけの木となりました。
白いお花が咲くヒイラギは、モクセイ科の木ですが、クリスマスに使われる赤い実のなるセイヨウヒイラギは、モチノキ科です。

冬のお花は、断然はシクラメンですね。春まで長くお花が楽しめます。
英語では、「sou bread」といい、文字通り、「雌豚のパン」という意味で、球根が豚の食べ物になることからきています。
「ぶたのまんじゅう」という言い方も、豚の食べ物からきています。

「かがりびばな」という素敵な名前もあります。
田辺聖子さんの短編に、「篝火草(シクラメン)の窓」という作品があります。
「週末の鬱金香(チューリップ)」という短編集の中のひとつです。
線路沿いの一軒家の窓辺に、冬はシクラメンが飾ってあり、その風景を電車の窓から、たのしみにしていた人がありました。
ある日、窓辺にシクラメンはなく、とてもそれが気になってしまった人は、シクラメンを抱えて、訪ねていきます。
短いおはなしですが、こころが静かにゆれる物語です。

古典の日と雅楽

2018.11.5よしなしごと

2008年11月1日に、「源氏物語」千年紀を記念して、「古典の日」が設けられました。
その日にちなみ、雅楽と平安時代やその文学のお話しがありました。

平安時代に入ると、詩歌管弦は習得すべき教養となり、朝廷での儀礼では、演奏されることも多く、管弦(雅楽)は、天皇や貴族にとり帝王学のひとつとして捉えられていました。
古代では和琴が、そして平安時代では笛が、平安後半から鎌倉にかけては琵琶が、そして室町時代は笙が、皇位の象徴として扱われました。

村上天皇(在位946~967)が966年10月7日に催された舞楽が、源氏物語の「紅葉賀(もみじのが)」でのモデルになったといわれています。
桐壺帝の祝宴の準備のために、左大臣家の頭中将と源氏が、「青海波(せいがいは)」を帝と御簾の向こうにいる藤壺宮の前で、美しく舞ったと描かれています。

また、枕草子の218段には、清少納言がなにを「いとをかし」と感じているのかという文章があります。

笛は横笛、いみじうをかし
笙の笛は、月のあかきに黒真などにて 聞きえたる いとをかし
篳篥は いとかしがましく 秋の蟲をいはば 轡蟲(くつわむし)などの心地して うたてけぢかく 聞かまほしからず
秋の蟲をこれにたとえるならば 不快で そば近く聞く気はしない

篳篥の音色は、人の声、つまり地上の音と表現されますが、平安時代には、大篳篥もあったそうで、雅楽の演奏者の間では、清少納言が「いとをかし」と指していたのは、大篳篥ではないかといわれています。

日本へ伝わった茶と高山寺

2018.11.1よしなしごと

急に寒くなり、散歩道の木も紅葉が進んできました。

紅葉の美しいスポットのひとつとして、京都の中心から少し離れますが、高山寺という古寺があります。
「京都、栂ノ尾高山寺、、」と「女ひとり」という歌に出てくるお寺です。
JR京都駅からバスが出ていて、一時間弱程乗りますが、降りると、空気感がまったく違って、すぐに日常から離れられます。

高山寺は「阿留辺幾夜宇和(あるべきやうわ)」という言葉で有名な、明恵上人ゆかりのお寺です。
国宝の石水院には、あの有名な鳥獣人物戯画があります。展示は複製ですが、ゆっくりと見ることができます。
そしてここは茶と、とても関係の深いところでもあります。

日本でお茶の歴史をたどると、729年天平元年に、聖武天皇が全国から僧を呼び、行茶の儀式を行ったと、「奥義抄」に記されています。
805年には、最澄が唐から茶の種を持ち帰り、翌年には、空海が茶の種と製茶法を教えたと伝わっています。

1191年、栄西(1141~1215)が宋から茶の種を持ち帰り、この茶の種を明恵上人に贈ったところ、それを栂ノ尾に植え、宇治をはじめ、その他の土地にも植えました。
そういう経緯から、ここは日本最古の茶園でもあり、明恵上人は茶祖ともいわれています。

栄西ですが、1214年、鎌倉幕府の三代将軍、源実朝(1192~1219)に「喫茶養生記」を書いて献上し、茶の飲用を勧めました。
茶の効用、茶の採取、製造法にいたるまで、詳しく記述し、病弱であった実朝に、茶で養生するようにすすめたものです。
実朝は神経衰弱だったので、茶は飲むと神経が鎮まる妙薬であり、薬として飲むように献納したわけです。

石水院に入ると、愛らしい善財童子の木像が迎えてくれます。

近くの神護寺、西明寺も素敵なので、散策されるといいと思います。