ティーロード  海路と陸路

2018.4.19紅茶

学生時代に聞いた英語の先生のお話しで、印象に残っていることがあります。
時制の勉強の時に、現在、過去、過去分詞と機械的に捉えるのではなく、たとえば、と“may”を例に話されました。
過去形の“might ”とに「ちから」があるから、未来に可能性が及んでいくのだと、言葉の流れを教えてくださいました。

言葉をたどると、歴史が浮かんでくることがあります。

「チャ」を表現する言葉に、その流れが残っています。
紅茶には、大きく分けて、「チャ」と「ティー」という言い方をしますね。

それは紅茶がたどったルートがふたつあるからです。陸路と海路です。

茶の発祥地である中国から、牛や馬、らくだを使って陸伝いにヨーロッパへ伝わった、陸路がひとつ。 

広東語である「Chaチャ」は内陸を通り、日本、ロシア、インド、中近東へとひろがっていきました。
日本は「Cha」、アラビアは「Chai] 、ポルトガルは「cha]、トルコは「chay]、ロシアは「chai]とチャ系の言葉です。

もうひとつは、大航海時代のポルトガル人やオランダ人の手を経て、海路から伝わりました。

福建省のアモイの方言、「tayテ」から、マラヤでは「te]、オランダやドイツは「Theeテ」と呼び、イギリスは「tea」、フランスは「the」、デンマークは「te」、 イタリアとスペインは「te」という名称になりました。

イギリスの紅茶、フランスのコーヒー

2018.4.3紅茶

イギリスでは、紅茶が広がっていったこと、フランスでは、紅茶ではなく、コーヒーが広まっていったこと、その、そもそもの理由は、どこにあったのでしょう。
それは、七年戦争(1756~1763)に端を発していると言われています。

王位継承権は、男性にあり、神聖ローマ皇帝のカール6世は、生まれた男児が夭折したため、長女であるマリア・テレジアを即位させることを、周辺の国々に根回ししました。
ところが、カール6世の死後、1740年、ハプスブルク家王位に就いたマリア・テレジアに対して、王位や領土の継承権をめぐり、周辺諸国が反対し、いわゆるオーストリア継承戦争が始まりました。

列国からマリア・テレジアの王位や領土継承の承認を取り付けた代償として、オーストリアは、プロイセンに領土のシュレジエンを割譲しますが、これがプロイセンとオーストリアの対立を深める原因となっていきます。

1756年に始まった7年戦争は、オーストリアがフランス、ロシアの援助を得て、プロイセンやその同盟国であるイギリスと戦った戦争でした。
オーストリア継承戦争で、領地シュレジエンを奪われたマリア・テレジアが失地回復を図った、言わば雪辱戦でしたが、結局、失敗。

その事の成り行きのひとつに、植民地争奪をめぐって行われた、イギリスとフランスの戦いがありました。
植民地の支配権を巡り、英仏の植民地戦争はスペイン継承戦争やオーストリア継承戦争の重要な部分を占め、七年戦争では、イギリスは決定的に勝利を収めます。

フランスはイギリスとの植民地争奪に敗れ、カナダやインドの権利や利益を失ってしまいました。
その結果、インドやアジアでしか収穫できない紅茶は、フランスに入ってこなくなってしまったのです。
その代わりに、フランス領の西インド諸島で、プランテーション開発が進んだコーヒーは、フランスに大量に輸入され、カフェ文化が発達することになります。

一方、イギリスは、コーヒー植民地が少なく、ロンドンで、始まったコーヒーハウスも、衰退していきます。
反対に紅茶は、供給源が豊かであったこと、そして、イギリス領の西インド諸島で取れる砂糖と結びつき、イギリスに定着していったのです。

春のきっかけと春の紅茶 

2018.3.12紅茶

奈良の東大寺二月堂では、3月に入ると、14日まで修ニ会が行われます。

特に12日深夜から未明にかけては、この行を勤める練行衆の道明かりとして、童子と言われる人たちが、7メートルもの大きなたいまつを振りかざし、二月堂の回廊を駆け巡る風景は、よくテレビで目にします。
一度も絶えることなく、今年で1260回を超えるというのですから、本当に驚いてしまいます。

お水取りが終わると、本格的に、春がやってきます。

春のお菓子と言えば、やはり桜餅やうぐいすもち、三色だんごなど、日本の四季を意識した和菓子に目がいきますね。
和菓子と紅茶は、合うのでしょうか。

紅茶は、緑茶のように繊維質を多く含んでいないので、甘みのある和菓子と合わせると、紅茶の渋みが、口の中をさっぱりとさせます。
そして紅茶の幅広い香りが、和菓子の個性を邪魔せず、個々の風味ととてもよく合います。

茶葉は、和菓子の強い甘みを和らげ、すっきりさせる紅茶として、少し渋みのある、ダージリン、キーマン、ウバ、ヌワラエリアが、合います。
ブラックで、頂きます。
和菓子には、ミルクを使った紅茶は、合いません。
目先を変えて、風味がやわらかい和紅茶と合わせても、おいしく頂けます。

誰に宛ててのことではありませんが、
春です。  起きてください。