米團治の「女はみんなこうしたもの」

2018.5.13音楽

モーツァルトのオペラ、「コジ・ファン・トゥッテ」、イタリア語で、cosiはこのように、fanはする、tutteはすべての女はという意味で、「女はみんなこうしたもの」というタイトルになりました。

でも今日は、「オペラ」ではなく、「オペ落語」のお話しです。
「オペ落語」というのは、落語家、桂米團治さんが始められた、文字通りオペラと落語を合わせた演目です。
米團治さんは、自らを、「モーツァルトの生まれ変わり」と言われるほど、モーツァルトやクラシック音楽に造詣の深い方です。

このオペラの登場人物は、
姉のフィオルディリージとその恋人である仕官のグリエルモ
妹のドラベッラとその恋人の仕官、フェルランド
男性ふたりの共通の友人であり哲学者でもあるドン・アルフォンソ    
姉妹の女中のデスピーナです。
    

あらすじを簡単にいうと、恋人というのは、裏切るようなことはしないものと主張する男性二人に対して、彼らの友人でもある哲学者のドン・アルフォンソは、そんなことはない、出来心、心変わりはあるものだと述べ、どちらが正しいか、賭けをすることになりました。
哲学者は、一計を案じます。
男性二人は、急に戦いに参加しなくてはならなくなったと言って、それぞれの恋人である姉妹と別れを惜しみ、船に乗り込むふりをします。
哲学者は、姉妹の女中に、悲しんでいる姉妹に対し、男性はほかにもいるのだから、恋を楽しみましょうと、そそのかせます。
哲学者は、男性ふたりを変装させ、グリエルモは妹を、フェルランドは姉の方を口説くように仕向けると、これが成功し、結婚にまで話しがすすみます。
結婚証明書に署名をするその時に、戦いに行っていたとされる男性二人が戻ってきます。

あわてる姉妹に、男性二人は変装をとき、真相を話します。
ゆるしを請う姉妹、そして男性二人も試すようなことはしないと誓い、最後はめでたし、めでたしのお話しでおわります。

二重唱、三重唱が美しいオペラですが、この「オペ落語」の舞台で一番盛り上がったのは、男性二人が船に乗り込む時、高座が帆船に変わって、舞台の袖に向かって動き出した時で、客席から大きな歓声と拍手が沸き上がりました。

ホットチョコレートとショパン、そしてアクセンフェルト

2018.3.31音楽

さくらが満開になり、ホットチョコレートの時期は過ぎた感じがありますね。
でもチョコレートには、疲労回復や、抗酸化力のあるポリフェノールがカカオ豆に含まれていることが、わかってきました。
元気に一日をはじめたい時に飲むと、気合が入りそうです。

ホットチョコレートを作って飲むと、ショパンのことを思い出します。
わたしは、Clipper(クリッパー)のドリンキング・チョコレートが手軽に作れるので、日々のホットチョコレートは、これで楽しんでいます。
残念ながら、ショパンと紅茶は、結びつきが見当たりません。
伝わっているのは、ジョルジュ・サンドと暮らしていた頃、病弱なショパンの身体を案じて、サンドが温かいホットチョコレートをショパンのために作っていたことでした。

ショパンのピアノ作品は、たくさんの演奏が残されており、時々の気分で聞きたくなる演奏家も変わりますが、好きなのは、ドイツのエディット・ピヒト・アクセンフェルトというピアニストの演奏です。
チェンバロの優れた演奏家でもあります。あのシュバイツァー博士の元で、オルガンも勉強しています。

チェンバロでバッハのゴールドベルク変奏曲だけのリサイタルを聴いた時でした。
少女のように軽やかにステージに現れ、最初のアリアを弾き始めたときに、呆然となってしまい、30の変奏曲が終わり、最初のアリアに戻ったときは、感動して椅子から立てませんでした。
以後、機会がある度に、アクセンフェルトのピアノとチェンバロを聴いてきました。

草津の音楽祭には、毎年のように来日しては、その年のテーマの作曲家のレッスンや演奏をしていました。
朝、ランゲンハーンというスイスのピアニストが残したメトードを、真摯に取り組んでいた姿は忘れられません。
実際にこのメトードを使うと、ピアノのタッチが変わってきます。
ただこのメトードは、単なる指の練習ではなく、内省的な思索が求められます。
気持ちを開放するために、ブラームスの51の練習曲を合わせると、バランスが取れるような気がします。

ピアノでは、シューベルトのソナタ、ブラームスの小品などが、そしてショパンでは、エチュードop.10とop.25 がCDに残されています。
チェンバロの演奏はたくさんCD化されています。
彼女の音楽は、音の美しさはもちろん、深い哲学があり、聴くと手が止まり、聴き入ってしまいます。

エマニュエル・セイソンのハープ

2018.3.16音楽

セイソンはフランスの若い、とても魅力的なハープの演奏家です。

二年前、何も知らず、先入観なく聴いたセイソンのハープに、とても感動してしまいました。
最初に、バッハのフランス組曲3番を演奏したのですが、1曲目のアルマンドからくぎ付けとなってしまいました。

シュポーアのc-mollの幻想曲
チャイコフスキーのオペラ エフゲニー・オネーギンの主題による幻想曲
ベルリーニのオペラ    ノルマの主題による序奏と変奏
ドビュッシー  前奏曲集から  ヒースの茂る荒れ地
                亜麻色の髪の乙女   など

彼は、心打たれるのは、ロシア音楽とフランスの音楽、特にドビュッシーの音楽だと言います。その音楽の求める透明感が、ハープの音とよく響き合い、表情のゆたかさや影の部分まで表現することができるという、彼の音楽性が好きです。

ハープを少し勉強したことがありますが、こんなに深く、表現できる楽器とは、知りませんでした。

彼は、ことしの夏、日本にやって来ます。