ゴディバと弓道

2017.10.27紅茶

グアムのおみやげに、ゴディバのチョコレートを頂きました。おいしく頂くために、チョコレートに合う紅茶を考えました。紅茶には、脂肪分を洗い流す作用もあるので、イングリッシュミルクティーが合います。また、スパイスティーにしてもおいしく頂けます。スパイスには、ジンジャー、カルダモン、ナツメグ、クローブなどありますが、シナモンを紅茶に加えると、甘いシナモンの香りと、チョコレートの原料であるカカオのほろ苦さがよく合います。

シナモンティーは、温めたティーポットに、茶葉とシナモンスティック少量を砕いて一緒に入れ、蒸らします。また、インディアンミルクティーにシナモンを加えてもおいしく頂けます。鍋に水と茶葉、シナモンスティック少量をつぶして入れ、火にかけ、紅茶が抽出できればミルクを加え、全体がふきこぼれる直前に火を止めて、茶漉しで漉します。チョコレートに砂糖の甘みがあるので、シナモンインディアンミルクティーには、砂糖は付けません。

「日本の弓術」というドイツ人哲学者のオイゲン・へリゲルという人が書いた小さな本があります。日本の文化を知るために、弓道を始めたヘリゲルですが、スポーツ競技ではないので、稽古はかなり哲学的になっていきました。ヘリゲルは的をねらわず、射るということが分からない。問うと、師は、夜に道場に来させます。的の前に細長い蚊取り線香を一本立てます。その光はとても小さくその場所が分からないぐらいだったのですが、師の最初の矢は命中します。第二の矢は、第一の矢をふたつに割いて命中していました。この暗さのなかで、的をねらわず射ることができるものなのか、ヘリゲルは衝撃を受け、問うことも考えることもやめ、稽古を続けていきます。

ゴディバ・ジャパンの社長、ジェローム・シュシャン氏がこの本を読んで弓道をはじめたことを知り、興味を持ちました。新訳「弓と禅」も出版されていて、スティーブ・ジョブズも愛読していたとか。そして去年、シュシャン氏自身が、「ターゲット」という本を出されましたが、「正射必中」ー正しく射られた矢は必ず的に当たるとか、的に当てるのではなく当たるなど弓道の言葉があり、ビジネス書でありながら、弓道の精神がよく記述された本です。

名前のゴディバのお話は有名ですね。11世紀のイギリス、コヴェントリーの領主レオフリックの妻である、レディゴディバは重税から領民をまもるため、夫の条件ー裸で馬に乗り町を回るのなら、減税を考えるということで、人々に、戸や窓を閉めさせ、長い髪でからだを隠しながら町をまわり領民を救ったという伝説が残っています。

時代祭りと清少納言

2017.10.22祭り

今日10月22日は、京都で行われる予定だった時代祭りが、台風のために中止になりましたね。天候不良での中止は、はじめてのことだそうです。時代祭りを含め、葵祭り、祇園祭りは、京都の三大祭りといわれています。

毎年5月15日に行われる賀茂祭りー葵祭りを見たことがあります。人が多くて混雑しているのではないかと案じていたのですが、下鴨神社では、ゆっくりと見ることができました。特に、藤の花できれいに飾られた牛車を真近で見たときは、とてもわくわくして興奮しました。

源氏物語の「車争い」のシーンが思い出されて、テンションが上がってしまったのです。物語では、葵祭りの前、斎院御禊(ぎょけい)の日に、光源氏が行列に加わることがわかり、源氏を見たい女性が多く集まっていました。その中に、源氏の正妻である身重の葵上もいました。周りのすすめでの急なお出ましで、良い場所が取れず、葵上の実家である左大臣の権力にものを言わせ、供のものたちが、身分が低く見える牛車を無理に立ち退かせてしまったのです。それが源氏をひと目見たく思い、目立たぬようお忍びで来ていた、源氏の愛人のひとり、六条御息所の網代車だったのです。車を壊され、葵上に来ていたことを知られた六条御息所は、屈辱を感じてしまいした。その後、物の怪に悩まされていた葵上を見舞った源氏は、物の怪の正体が六条御息所の生霊とわかって驚いてしまいます。葵上は夕霧を生んだあと、あっけなく死んでしまい、葵上が亡くなったことを知った六条御息所は、自身をうとましく思い、斎宮となった娘とともに、伊勢に下っていきます。これは源氏物語の話ですが、賀茂祭での実話も残っています。

清少納言の父、清原元輔(きよはらのもとすけ)は官位は低かったけれども歌人でありました。賀茂祭の使者として、一条大路を馬で行く途中で馬が何かにつまずき、落馬してしまいました。その時、冠が落ちて、はげ頭をさらしてしまい、見物のひとたちの失笑を買いました。この時代、冠や烏帽子を取るというのは、下着を取ることと同じように恥ずかしいことと考えられていたのです。供の差し出す冠をすぐに付けるのかと思われたのですが、落ちた所が殿上人の車が多くあった所で、元輔は大笑いをしていたその公達に対して、往来で演説をし始めたのでした。気をつけていても、人はつまずくことがある、馬もつまずくことがある。冠は、単に頭に載せるものであって、結わえるものではない。髪の毛があれば、冠を載せることもできるが、ない場合は滑り落ちることもある。誰の非でもなく、笑うものではないのだと言い、悠然と冠を被りなおしたと、元輔のひととなりが分かる話が伝わっています。元輔が年をとってから生まれたという清少納言ですが、案外楽しい家庭で育ったのかもわかりません。

八宝茶とラプサンスーチョン

2017.10.16紅茶

知人の中国人が、おいしい八宝茶があるからと招いてくれました。「八宝」というのは、中国語で大切なものがいっぱいあるという意味だそうで、ふたが付いたお湯飲み-「蓋碗(がいわん)」といいます-に用意してくれました。一人ひとりのお湯飲みに、直接八宝茶を入れ、お湯を注ぎ、ふたをして蒸らします。

ふたを取ると、少しの茶葉と、なつめ、菊の花、サンザシ、龍眼、クコの実、レーズン、氷砂糖が入っていました。漢方で、からだに良いものだろうと想像できましたが、氷砂糖の意味がわかりません。聞くと氷砂糖は甘みだけではなく、肺を潤し、咳止めにもなるそうです。

ポットを使わず、中身を入れたまま飲むので、普通の飲み方とは違っています。ふたを少し奥のほうにずらして飲み口を作り、片手でふたと茶碗を同時に持って、飲み口から中身が出ないようにして、お茶を頂きます。飲み終われば、またお湯を足して、3~4煎飲めるそうです。氷砂糖は溶けてしまいますが、お茶として終われば、中身は食べられます。

八宝茶の中の龍眼ですが、中国紅茶のラプサンスーチョンと関係があります。ラプサンスーチョンは、燻った匂いがあり、好き嫌いがある紅茶と言えますが、1830~1834にイギリスの首相であったグレイ伯爵が、中国の使節団が持ち帰ったその紅茶をとても気に入ったと伝わっています。それは福建省武夷山で作られた松の薫煙で香りをつけた中国紅茶でした。イギリスの硬水で入れたラプサンスーチョンは、香味が抑えられ、スモーキーで龍眼の香りー甘くて、柑橘類に似た香りーとたとえられたものの、その香りを知らないイギリス人は、1820年頃から知られるようになった、シチリアのベルガモットのオイルを手に入れ、中国紅茶に香りをつけました。 

そして、紅茶ではじめてのフレーバーティーとなったこの紅茶に、グレイ伯爵が好んでいたことにちなみ、アールグレイと命名されたのです。トワイニング社のアールグレイは、中国紅茶のキーマンにベルガモットで香りをつけたものでしたが、特許を取らなかったので、現在は、各メーカーがいろんな茶葉にベルガモットの香りをつけて「アールグレイ」として販売しています。