八宝茶とラプサンスーチョン

2017.10.16紅茶

知人の中国人が、おいしい八宝茶があるからと招いてくれました。「八宝」というのは、中国語で大切なものがいっぱいあるという意味だそうで、ふたが付いたお湯飲み-「蓋碗(がいわん)」といいます-に用意してくれました。一人ひとりのお湯飲みに、直接八宝茶を入れ、お湯を注ぎ、ふたをして蒸らします。

ふたを取ると、少しの茶葉と、なつめ、菊の花、サンザシ、龍眼、クコの実、レーズン、氷砂糖が入っていました。漢方で、からだに良いものだろうと想像できましたが、氷砂糖の意味がわかりません。聞くと氷砂糖は甘みだけではなく、肺を潤し、咳止めにもなるそうです。

ポットを使わず、中身を入れたまま飲むので、普通の飲み方とは違っています。ふたを少し奥のほうにずらして飲み口を作り、片手でふたと茶碗を同時に持って、飲み口から中身が出ないようにして、お茶を頂きます。飲み終われば、またお湯を足して、3~4煎飲めるそうです。氷砂糖は溶けてしまいますが、お茶として終われば、中身は食べられます。

八宝茶の中の龍眼ですが、中国紅茶のラプサンスーチョンと関係があります。ラプサンスーチョンは、燻った匂いがあり、好き嫌いがある紅茶と言えますが、1830~1834にイギリスの首相であったグレイ伯爵が、中国の使節団が持ち帰ったその紅茶をとても気に入ったと伝わっています。それは福建省武夷山で作られた松の薫煙で香りをつけた中国紅茶でした。イギリスの硬水で入れたラプサンスーチョンは、香味が抑えられ、スモーキーで龍眼の香りー甘くて、柑橘類に似た香りーとたとえられたものの、その香りを知らないイギリス人は、1820年頃から知られるようになった、シチリアのベルガモットのオイルを手に入れ、中国紅茶に香りをつけました。 

そして、紅茶ではじめてのフレーバーティーとなったこの紅茶に、グレイ伯爵が好んでいたことにちなみ、アールグレイと命名されたのです。トワイニング社のアールグレイは、中国紅茶のキーマンにベルガモットで香りをつけたものでしたが、特許を取らなかったので、現在は、各メーカーがいろんな茶葉にベルガモットの香りをつけて「アールグレイ」として販売しています。

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