福岡伸一先生の青という色

2023.7.29よしなしごと

生物学者の福岡伸一先生の、「わたしのすきなもの」を読みました。

その中のオオルリアゲハの章、青についての文章に、感動しました。

海の青、山の青、空の青、どの青も手に取ることはできない
水や空気の性質によって、太陽の光の中から、青い光が選び出されているから
青く見えるだけ
物質ではない、現象としての青

オオルリアゲハの美しい青も取り出すことはできない
翅は黒い粉と化して、青はたちまちなくなってしまう
翅にあるうすいミクロなガラス状の層が、青い光だけを反射している
この構造を壊すと、この青も儚く消えてしまう

光としての青は、赤や黄に比べエネルギーが強く、生命がまだ小さな単細胞生物
として、太古の海に漂っていた頃、最初に感知したのは、青色だったのかもしれない
青がその方向を教えてくれ、青に向かって必死に泳いだことでしょう

生命にとって、必要なものを、うつくしいと感じるのが美の起源だとすれば、
人が青を好むことにも、深い理由があるのかもしれない

福岡先生がお好きなフェルメールの光と青には、どんな深い理由があるのでしょう

福岡先生といえば、動的平衡
それは、絶えず動きながら、バランスを作りなおす営みのこと
それが、生命の一番大切な特性

わたしのすきなものとは、つまり自身を育み励まし守ってくれたもの
というおしまいの言葉は、生きていくとき、携えるすてきなことばだと
おもいました。

京都祇園祭の結び

2023.7.18よしなしごと

昨日、7月17日は、京都祇園祭の前祭でした。

前祭のときに、京都に出かけ、鉾や飾りを真近で見たことがあります。
織物もすばらしく、いろんな飾りが近くで見れたのは、とてもラッキーでした。

25メートルもあるという、長刀鉾は、神の依代だそうで、この鉾に神をお迎えする
といいます。
これは、車輪も大きく、お稚児さんが乗り、この中にはもちろん、屋根の上にも、
たくさんの人が乗ります。

結びの研究をされている関根みゆきさんの文章を読むと、軋むであろうこの山鉾には、釘を使うと全部とんでいくそうなので、縄を結んでいくことで、力を分散させている
そうです。

祇園祭は、疫病退散のお祭りなので、疫病を起こす神を集めて、お囃子や美しい飾り、織物でもてなす、これが先払いとなります。

巡行してもどってくると、その神々がとび散らないように、すぐに解体して、封じ込めます。

巡行のあとに、かならず、壊さないといけないのにもかかわらず、縄は、美しく結ぶ。
結んでいるので、元にもどしやすく、毎年、結びなおせる。
まさしく、解くまでが、結びでした。

後祭は、7月24日です。

総角(あげまき)結びと封じ結び

2023.7.17よしなしごと

大相撲の夏場所がはじまり、すでに中日も超えました。
三関脇が、同時に大関になれるか、と勝負もたのしみですが、土俵の四隅の飾りひもがとても気になり、調べてみました。

これは、総角結びといい、元々は、男性の角髪(みずら)を型どったもので、鎧の背の飾りにも、そして古くは高松塚古墳の壁画にも見られる結びだそうです。

そういえば、結び方を習ったのは、お茶のおけいこのときで、茶入れの袋の
仕覆(しふく)結びでした。

意味など知らず、単に所作のひとつだと思い、おけいこしてましたが、それは、
茶入れに毒を盛られないようにするためだったのです。

戦国時代、茶室は密談の場所でもありました。
藩の茶道役を司っていた人は、主君を毒から守るために、自分だけが知っている結び方で結び、毒を盛ったとしても、元通りには結べないようにしたのです。

まさしく、鍵の役目でもあったのです。
これを封じ結びというそうです。

封じ結びは、文箱にも使われていたようで、大切な手紙を見られてはいけないという
ことで、ここでも鍵の役目を果たしていました。

ただこれは、口伝だそうで、いくつ、いまに残っているのでしょう。

総角結びが気に入ったので、いろんなひもで作り、お部屋に飾りたいと思いました。