梅と源氏物語の薫物

2018.3.14よしなしごと

梅を見に行ってきました。
毎年、梅を見に行くのですが、今年は、はじめて満開の梅を、目にすることができました。

梅を見ると、紫の上を思い出します。
源氏物語で、紫の上が好きな紅梅を、源氏の君と一緒に愛でるシーンがあります。普段は座っていたり、ひざ立ちの生活の紫の上が、六条院の庭に咲く梅を、
源氏とふたりで、立って眺めるシーンは素敵で、印象に残っています。

もうひとつ、源氏物語、32帖「梅枝(うめがえ)」の巻には、香の話しがでてきます。

明石の上の娘、明石の姫君の裳着、そして東宮に入内する準備に、薫物の調合をします。
平安時代は練り香でした。

源氏の君が調合したのは、「侍従」、そして4人の女性にも調合をさせました。
紫の上が調合した薫りは、「梅香(ばいか)」、花散里は、「荷葉(かよう)」、朝顔の君は、「黒方(くろぼう)」でした。 
明石の上は、練り香ではなく、薫衣香(くんえこう)という、着物に焚き染める香を作りました。

そこに、源氏の弟である、兵部卿の宮がやってきたので、どの香がすばらしいか、と判定をゆだねます。
「侍従」は、艶があり優美であると、「黒方」は、静かな趣きがすぐれていると、「荷葉」は、変わった気分がするが、なつかしい香りであると、
「梅花」は、若々しく、はなやかで、珍しく冴えた気の添っているものと、そして明石の君の薫衣香は、とても優美な香りといい、
どれも優劣が付けにくいと語ります。

そのあと、管弦の世界に入っていくのですが、香りを具体的に想像できるので、とても興味の持てる巻でもあります。

江戸時代に「組香」と言って、源氏物語54帖の巻名を図式化したものがありますが、「源氏香之図」は、デザイン性としてもすぐれていると思います。

わたしが歩くとき わたしが歩くとき

2018.3.10よしなしごと

ポーセリンペインティングをしている友だちと、会いました。彼女は、磁土から作品を作り、絵付けをしています。わたしへの新作のプレゼント兼ご意見伺いでした。

イギリスでは、ティータオルの出始めの頃から、ウェッジウッド、コールポートの食器が大切にされました。スージー・クーパーのデザインは、現エリザベス女王の母、皇太后もお好きだったようで、アンティークとして、いまも人気がありますね。
マイセンやヘレンド、ジノリ、フランスのジアン等々、日本では、楽吉左衛門(らく きちざえもん)を好み、ボタニカルアートでドゥルーテの絵も勉強している彼女の作品がたのしみです。
アトリエでゆっくり作品を考えたいし、冗談まじりに、それに歩くのもゆっくりがいいという言葉に、思い出すことがありました。 

ネイティブアメリカンのひとつに、ナバホ族がありますが、そこに伝わっている美しい詩があります。

As I walk with Beauty

As I walk,as I walk
The Universe is walking with me
In beauty it walks before me
In beauty it walks behind me
In beauty it walks below me
In beauty it walks above me
Beauty is on every side
As Iwalk,I walk with Beauty

美しさとともに歩くとき

わたしが歩くとき、わたしが歩くとき
世界もわたしと共に歩く
美しい世界がわたしの前を歩く  
美しい世界がわたしのうしろについてくる
美しい世界がわたしの足元にある
美しい世界がわたしの上にひろがる
美しさは周りのすべてにある
わたしが歩くとき、わたしは美しさと共に歩く

女性の日とミモザの日

2018.3.8よしなしごと

3月8日は「国際女性デー」と言われています。
始まりは、1904年アメリカで女性の参政権を求め、デモが起こったことがきっかけです。それから6年後、女性の政治的な自由や平等のために立ち向かう日として、記念日となりました。

同じ日、イタリアでは、「Festa Della Donna フェスタ デッラ ドンナ」 つまり、「女性の日」と言われ、男性が感謝を込めて、ミモザの花を贈る日です。
「女性の日」にふさわしい花として何を贈るのがいいのだろうか、当初はスミレの花が候補に挙がったのですが、スミレの花は高価で、みんなが気軽に贈ることはできません。
ミモザの花は、イタリアでは、自生する身近な花だったため、誰でも気軽に贈れるというところから、ミモザに決まったそうです。
花言葉には、思いやり、友情、女性らしさがあります。
春を告げる花と言われ、華やかな黄色が街にあふれるのは、とてもわくわくする素敵な風景だと思います。

ミモザの花で思い出すのは、シャンソン歌手バルバラが歌った、「ミモザの島」です。

そして小説では、岸惠子さんが書かれた、「わりなき恋」にミモザがでてきます。
1968年の「プラハの春」、「アラブの春」、東北の地震を時間軸に、若くはない女性と年下の男性との出会いと別れを描いた作品です。
エピローグでは、笙子のことは、書かれていません。
別れから10年後、男は坂の上の笙子の家を訪ねるのですが、裏庭に大きな房をつけたミモザの木だけがあり、ミモザの花は夕闇に包まれ、遠く蒼ずんで、空の中にとけていた、と結ばれています。

ゆで卵の黄身だけを丁寧に裏ごしにかけると、サラダ、ちらし寿司などお料理の仕上げに使うと、華やかでおいしいミモザになります。