ベジャールとジョルジュ・ドン

2017.11.20ダンス

バレエの振付家であったモーリス・ベジャールが亡くなって、もう10年が過ぎたのですね。モーリス・ベジャール・バレエ団が今月、ベジャール・セレブレーションの公演をしています。

春の祭典、ザ・カブキ、M、ライト、ボレロをはじめ、ベジャール振り付けの作品がたくさんありますが、はじめて見たベジャールの作品は、ジョルジュ・ドンとマイヤ・プリセツカヤが踊った、「レダ」でした。「レダ」は、ギリシャ神話のスパルタ王の妻レダに心を奪われたゼウスが、白鳥に姿を変え愛したという話しですが、このストーリーは昔から芸術作品のモティーフとして、よく使われてきました。実際の作品は残っていませんが、ダ・ヴィンチやミケランジェロも習作やスケッチを残し、別の人がそれを元にした作品もあります。日本では、東郷青児が「レダ」という題名の絵を残しています。

「レダ」はプリセツカヤが「瀕死の白鳥」の時のように舞台に現れて踊りはじめるのですが、いままでにないバレエの振り付けとジョルジュ・ドンのダンスにくぎ付けになり、他のトップダンサー達のダンスが消えてしまいました。
ジョルジュ・ドンは何度か日本に来て公演をしましたが、結局「ニジンスキー神の道化」という作品が最後の舞台となってしまいました。それは、アルゼンチンの女優との共演で バレエ作品というよりも演劇性の強い作品で、劇中、何度か舞台のジョルジュ・ドンが「ニジンスキー」と叫んだ声は今も憶えています。 

クロード・ルルーシュ監督の「愛と哀しみのボレロ」は1981年製作の映画ですが、2015年にデジタルリマスター版を劇場で見たとき、新たに感動してしまいました。映画の後半に踊るジョルジュ・ドンのボレロはすばらしく、今までにシルヴィ・ギエム、首藤康之、プリセツカヤなどベジャールが選んだダンサーがボレロを踊っていますが、ジョルジュ・ドンのボレロには、心が惹きつけられてしまいます。見る側もいろんな経験を通し、感動の密度が違ってきているのかもわかりません。

ベジャールから指導を受けた首藤康之さんが、ベジャールは振り付けのあいだ、とても美しい言葉で話すと印象を語っていましたが、ベジャールの哲学が感じられて、素敵なエピソードとして忘れられません。

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