徒然草に見る幼な子のうた

2022.10.25よしなしごと

つれづれなるままに 日くらし 硯にむかひて 心に移りゆくよしなし事を、、ではじまる徒然草は、全部で243段あります。

男性について、姿かたちの美しいのがいい、とはいえ、中身がなくては、つまらない。
だからと、学ばなければならないものを書きつらねたあと、男は下戸ならぬこそよけれ、と書き加えています。

女性については、家の中をきちんとおさめる女はつまらない、また子供ができるとふたりで可愛がっているのだろうと思うと、目も当てられない、と言いたい放題。
どんな女も、明け暮れ見ているとつまらなくなる。
女もそうであろう。
時に通い、泊まるというのが、男女の仲が長続きするだろうと結んでいます。

友にしたくないのは、若き人、からだの強い人、欲深い人、嘘をつく人、酒乱の人、
病いのない人、身分の高い人と七つあげています。
反対にいい友として、物くるる友、医者、智恵ある友と三つ述べ、はじめに、物くるる友と書いているのが、とても即物的で、笑ってしまいます。

幼い子に対しては、おどしたり、こわがらせたり、幼な心はどんなに悲しくつらいだろう、悩ませておもしろがるのは、慈悲の心とはいえないと、やさしい心持ちを表現しています。

小さい人のかわいいおはなしも添えられています。

後嵯峨天皇の子、延政門院が幼いころ、父の御所へ参上する人に言づけた、という歌です。

ふたつ文字、牛の角(つの)文字、直(す)ぐな文字、歪(ゆが)み文字とぞ君は覚ゆる

ふたつ文字は、上下にふたつの「こ」、角のかたちの「い」、まっすぐな文字は「し」、歪み文字は「く」、あわせると「こいしく」になります。

延政門院に仕えていた一条という女房と兼好は歌を詠みかわしていたので、この可愛らしいエピソードもこの女房から聞き、記したのかもわかりません。

ああだこうだと好き放題に書かれてると思っていた徒然草ですが、後半に、こんな
こころたのしくなるようなお話しも書き記し、最後の243段には、兼好が八才のとき
仏のことを父にこどもらしく問うたことがたのしく書かれています。

兼好の、ものを見、書き綴った内容が、軽くほぐれていく流れを見ていくようでした。

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