紅茶は薬だった

2017.8.25紅茶

1562年、ポルトガルの宣教師であるルイス・フロイスが、日本にやって来ました。フロイスの「日本の歴史」を読むと、当時のヨーロッパ人が、お茶をとても興味を持って見ていたことが、よくわかります。

フロイス曰く、「日本人は親愛の証しとして、自ら所蔵する財宝を見せる習慣があるのです。それらは、ある粉末にした草を飲むために用いるすべての茶碗と、それに必要とする道具です。それは茶と呼ばれ、飲み慣れた人には味が良いばかりでなく、健康増進にも役立ちます。その所作に用いられるすべての品は日本の宝物であって、ヨーロッパ人が指輪、宝石、非常に高価な首飾り、真珠、ルビー、ダイヤモンドを所持しているようなものです。この場所は、この儀式のためにのみ入る特定の室で、その清潔さ、造作、整然としていることを見ては、驚嘆に値します。手ずから私たちに茶を供す、それは草の粉末で、ひとつの陶器の中に熱湯で淹れたものでした。」

岡倉天心の「茶の本」には、「茶はもともと薬として用いられ、やがて飲み物になったもので、ヨーロッパの文献にあらわれたもっとも早い茶に関する記事は、アラビア人の旅行者の手になるものだった」と記述があります。

ベネチアの作家ラムジオは、16世紀半ばに中国の茶について、茶は熱病、頭痛、関節の痛みをやわらげ、食欲不振や食べすぎにも良いと記しました。
同じ頃、中国を訪れたポルトガルの宣教師は、ここでは客にチャという飲み物をもてなしとして出すが、これは苦く、薬でもあると書いています。
            
イギリスに茶が取り入れられたのは17世紀の中頃で、あちこちに出来始めていたコーヒーハウスで扱っていたコーヒーと茶が、人気となっていました。ロンドンにコーヒーハウスを出したトーマス・ギャラウェイは、茶の売り込みに宣伝という方法を使いました。茶の効用をうたっての宣伝で、茶はからだをあたため、健康を維持する飲み物である、頭痛、結石、下痢、胃痛から不眠にいたるまで効くと宣伝したのです。

およそ350年たったいまも、紅茶に含まれている成分の研究がなされていますが、紅茶の効用として、がんの予防、動脈硬化、高血圧の予防、利尿作用、肥満防止、殺菌、などが発表されています。

このように茶は、万病に効く東洋の神秘薬として、ヨーロッパに伝えられていました。現代にもその名残があります。イギリスで有名な紅茶、タイフーティー(Typhoo tea)の「タイフー」という言葉は、中国語で「医者」のことです。

現代に薬として活かすなら、からだをあたためる、温活を考えるのが良いと思います。もともと発酵茶である紅茶は陽の性質を持っていますが、さらに血行を良くし、からだをあたためる作用のある生姜やシナモンをシングルティーやチャイに入れるとおいしくいただけます。特に生姜は、平安時代には、貴族が風邪のときに生姜湯を飲んでなおしていたぐらいです。

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