福岡伸一先生の青という色

2023.7.29よしなしごと

生物学者の福岡伸一先生の、「わたしのすきなもの」を読みました。

その中のオオルリアゲハの章、青についての文章に、感動しました。

海の青、山の青、空の青、どの青も手に取ることはできない
水や空気の性質によって、太陽の光の中から、青い光が選び出されているから
青く見えるだけ
物質ではない、現象としての青

オオルリアゲハの美しい青も取り出すことはできない
翅は黒い粉と化して、青はたちまちなくなってしまう
翅にあるうすいミクロなガラス状の層が、青い光だけを反射している
この構造を壊すと、この青も儚く消えてしまう

光としての青は、赤や黄に比べエネルギーが強く、生命がまだ小さな単細胞生物
として、太古の海に漂っていた頃、最初に感知したのは、青色だったのかもしれない
青がその方向を教えてくれ、青に向かって必死に泳いだことでしょう

生命にとって、必要なものを、うつくしいと感じるのが美の起源だとすれば、
人が青を好むことにも、深い理由があるのかもしれない

福岡先生がお好きなフェルメールの光と青には、どんな深い理由があるのでしょう

福岡先生といえば、動的平衡
それは、絶えず動きながら、バランスを作りなおす営みのこと
それが、生命の一番大切な特性

わたしのすきなものとは、つまり自身を育み励まし守ってくれたもの
というおしまいの言葉は、生きていくとき、携えるすてきなことばだと
おもいました。

ミェチスワフ ホルショフスキの音楽

2023.7.18音楽

ポーランド生まれの、そして、99才まで、公の場で演奏会を開いていたピアニストがいます。

ショパンの直弟子、カール・ミクリに学んだ母から手ほどきを受け、長きに渡って
チェリストのカザルスと演奏活動をしていました。
カザルスが、国連で「鳥のうた」を弾いたときも、ピアノはホルショフスキでした。

1987年、カザルスの名前を冠したカザルスホールの柿落としに、95才のときに、はじめて来日し、二回コンサートを開きました。

とても端正な、うつくしいピアノの音で、特にバッハのイギリス組曲5番に、
感動しました。

そのころのテレビのドキュメンタリーで、「ホルショフスキの奇跡」という番組が
ありました。
コンサートの様子、日常生活、レッスンの様子、癇癪を起こしているところさえ、
映像にありました。

ホルショフスキ、89才のときに、40才年下のビーチェ夫人と結婚したのですが、
その時の、「人生のよいことには、いつも、時間がかかります」という夫人の
ことばは、すてきだなと、いまもこころに残っています。

レッスンのときに、「作曲家はピアニストのために、音楽を作ったのではない
ピアノのために作ったのだ」という、ホルショフスキのことばは、とても大切な
教えだと思いました。

敬愛するひとと寄り添い、一度に、ひとつのことだけをやること、決してあれこれと、気を散らさないこと、という約束を、規則正しい生活とともに過ごしていくのは、
人生に深く集中できた日々ではなかったかとおもいました。

京都祇園祭の結び

2023.7.18よしなしごと

昨日、7月17日は、京都祇園祭の前祭でした。

前祭のときに、京都に出かけ、鉾や飾りを真近で見たことがあります。
織物もすばらしく、いろんな飾りが近くで見れたのは、とてもラッキーでした。

25メートルもあるという、長刀鉾は、神の依代だそうで、この鉾に神をお迎えする
といいます。
これは、車輪も大きく、お稚児さんが乗り、この中にはもちろん、屋根の上にも、
たくさんの人が乗ります。

結びの研究をされている関根みゆきさんの文章を読むと、軋むであろうこの山鉾には、釘を使うと全部とんでいくそうなので、縄を結んでいくことで、力を分散させている
そうです。

祇園祭は、疫病退散のお祭りなので、疫病を起こす神を集めて、お囃子や美しい飾り、織物でもてなす、これが先払いとなります。

巡行してもどってくると、その神々がとび散らないように、すぐに解体して、封じ込めます。

巡行のあとに、かならず、壊さないといけないのにもかかわらず、縄は、美しく結ぶ。
結んでいるので、元にもどしやすく、毎年、結びなおせる。
まさしく、解くまでが、結びでした。

後祭は、7月24日です。